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バット用語を徹底解説!あなたはいくつご存知ですか?

最終更新日:2020.08.07

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バットの性格を知るためにはバット用語の熟知が不可欠

今回のスラッガー養成コラムでは、バットについてじっくりと語っていきたいと思います。野球のバットには色々な種類があります。単純に硬式用、軟式用、ノック用とあり、硬式用だけを見ても様々な形状があります。「道具に頼ることなく長打を打つ」とは言っても、やはりバットの性格を知っておかなければバットを上手く扱うことができず、ミート力も低下してしまいます。そうならないために、今回はバットについて語り尽くしたいと思います。

野球経験者であれば、バットについてある程度はちゃんと知っていると思います。でも今回のスラッガー養成コラムで書くすべてのことを知っていたという方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか?バットの性格をよく知るためには、バット用語を正しく学んでおく必要があります。バット用語を知らずしてバットを知ることはできませんので、この機会にしっかりとバット用語をおさらいしておきましょう。

ノブ

ノブとは、グリップエンドの一番先っぽにあるドアノブのように膨らんだ部分のことです。ここをグリップエンドと勘違いされている方も多いようですが、ここは厳密にはノブと言います。ドアノブと同意語のノブです。ノブの役目は、バットを振った時にバットが手からすっぽ抜けないようにするためのストッパー役です。

いくらしっかりと握っているつもりでも、バットとボールがぶつかると、その衝撃によってバットが手の中で僅かに遊んでしまうんです。握力が弱い選手であればなおさらです。手の中での遊びが大きくなるほど打球は力強さを失い、バットもすっぽ抜けやすくなります。バッターの場合、この遊びをなくすために強靭な握力が必要になってくるわけです。

埼玉西武ライオンズの栗山巧選手の握力は80kgで、この数値は筋骨隆々の外国人選手よりも高いんです。栗山選手は以前はかなりバットを短く持っていたのですが、この握力があるからこそバットを短く持ってノブに頼らない打ち方をしてもバットがすっぽ抜けることなく、シーズン最多安打を記録するなどの大活躍を見せることができました。

しかし握力が並以下の数値であれば、短く持つのはヒット&ランなど、絶対に右方向に転がさなければならない状況だけにしておいた方が良いと思います。通常はノブを使うことによって、バットがすっぽ抜けないようにしていきましょう。

グリップエンド

金属バットで言えばテープを巻いた部分、ツートーンカラーの木製バットであれば色が変わっている部分をグリップと言います。そのグリップの一番ノブに近いエリアをグリップエンドと言います。そしてグリップエンドには主に2つの形状があります。

まず真っ直ぐの状態になっているものはストレートタイプと言います。金属バットの場合は大半はストレートタイプだと思いますが、木製バットの場合は少し膨らんでいるもの多くあります。

グリップエンドが膨らんでいるものをフレアタイプ、タイカッブタイプと言い、その名の通り、アメリカの野球殿堂第一号選手となった往年の名選手、タイ・カッブ選手が使っていたことからそう呼ばれるようになりました。

ストレートタイプのグリップエンドのバットの特徴

ストレートタイプのグリップはバットを立てて構えるタイプのロングヒッターが、ヘッドを効かせやすくなって飛距離を伸ばせるようになります。しかし力がない選手がバットを立ててしまうとバットの重さに負けて、ヘッドが下がってしまうことがあるため注意が必要です。

また、ストレートタイプのグリップで強振を続けてしまうと手首を怪我するリスクがあるため、日常的なフルパワースウィングは控えた方が良さそうです。

それに加え、バットを寝かせて構えるタイプのバッターがストレートタイプのグリップのバットを長く持ってしまうと、始動の瞬間にヘッドが背中側に落ちてしまうことがよくあります。そうなってしまうと始動そのものに遅れが出て差し込まれやすくなるため、長打はあまり狙わないタイプのバッターがバットを寝かせて構える場合は、少し短く持つのもありだと思います。

フレアタイプのグリップエンドのバットの特徴

個人的には選択肢があるのであれば、ストレートタイプよりもフレアタイプのバットの方が良いと思っています。その理由はフレアタイプのグリップエンドは、バットがすごく扱いやすくなるためです。つまりミート力が上がりやすい、ということです。両方を振り比べてもらうとわかると思うのですが、ほとんど方はフレアタイプのグリップエンドの方が振りやすいと感じると思います。

そしてフレアタイプのグリップエンドは、手首を故障するリスクを軽減してくれます。ストレートタイプの場合、強振すると必要以上に手首がヘッドの勢いに持っていかれてしまい、手首が返りすぎてしまったり、曲がってしまったりするんです。その状態でインパクトを迎えてしまうと、手首に大きな負荷がかかることになり、打者特有の手首痛が引き起こされてしまいます。

プロ野球選手の中にも手首痛を経験している選手は多く、その場合はバットをフレアタイプに変えたり、小指をノブにかけて振ることにより、手首への負荷を軽減させています。ちなみに小指をノブにかけると、ある程度バットを寝かせていたとしてもヘッドを効かせやすくなります。ただし、ミート力が低いバッターにはオススメできません。

金属バットのグリップエンドはストレートタイプがほとんどだと書きましたが、金属バットをフレアタイプに改造できるゴムパッドが500〜1000円程度で市販されていますので、金属バットをフレアタイプに変えたい方は探してみてください。ただし、ソフトボール用のバットにはルール上使えないと思いますので、グリップテープの下にゴムパッドを使うのは野球用の金属バットのみにしてください。

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グリップ

グリップについての説明は必要はないと思います。金属バットの場合はグリップテープを巻いた部分がグリップですね。ちなみにこのグリップテープですが、右打ちと左打ちでは巻き方が逆になりますので、貼り替える際はご注意ください。巻き方を逆にしてしまうとあっという間に剥がれてしまいます。

それと、グリップエリアから外れてバットを短く持つことは避けてください。このようにバットを短く持ちすぎてしまうと、スウィング時にノブが腹部に当たってしまうことがあり、とても危険です。ですのでバットは必ずグリップエリア内で握るようにしてください。

そしてアマチュア選手向けのバットには、グリップエリアのすぐ近くにSGマーク、もしくは製品安全協会と記されたシールが貼ってあるのですが、このシールは絶対に剥がさないでください。想定内の正しい利用方法でバットが破損して、万が一怪我してしまった場合はメーカーが補償してくれるはずです。しかしこのシールが剥がされていると、補償を受けられないということもあります。

2020年8月の高校野球で、ピッチャーのボールを打った際に、試合専用で半年くらいしか利用していない比較的新しい金属バットが、まるで木製バットのように真っ二つに折れるという出来事がありました。この時は怪我人が出なかったからよかったのですが、このようなことも稀に起こりますので、このシールはくれぐれも剥がさないようにしてください。このシールはバットの保険証のようなものです。

バレル

最近はバレル打法という言葉も一般的に知られるようになって来たため、バレルという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。バレル(Barrel)とは樽という意味なのですが、バットの太くなっているエリアのことをバレルと言います。

スウィートスポットを外してしまったとしても、このバレルエリア外でボールを打つことは絶対に避けてください。木製バットであれば簡単に折れてしまいますし、金属バットだと手が痺れたり、不必要な衝撃により怪我をしてしまうこともあります。

軟式野球用のビヨンドは、バレルエリアにポリウレタンが巻き付けられています。このポリウレタンにより、木製バットのしなりや金属バットのクッション性で作り出したいトランポリン効果を誰でも簡単に使えるようになります。どんなバットでもこのトランポリン効果という物理学を用いなければ飛距離は伸ばせないわけですが、ビヨンドの場合はバレルをポリウレタンにすることによって、バットに当てるだけで大きなトランポリン効果を得られるようになっています。

ビヨンドのような複合バットは特殊なケースだとしても、とにかくボールはバレルエリア以外には当てないように気をつけてください。根っこに当たっても、先っぽに当たってもクリーンヒットは打てませんし、バットも折れやすいですし、バレル以外で打ってしまうとインパクトの衝撃をバットが吸収できなくなり、その衝撃がダイレクトに手に伝わることによって怪我をしやすくなります。ですのでしっかり練習をして、いつでもボールをバレルエリアで打てるようにしていきましょう。

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スウィートスポット

スウィートスポットを芯だと思っている方も多いかもしれませんが、スウィートスポットと芯は別物です。スウィートスポットというのは「ここに当てれば打球がよく飛んでいく」というポイントのことです。木製バットだとだいたい2mmくらい、金属バットが5〜20mm、ビヨンドは20cmくらいとなります。

スウィートスポットの場所はバットによってすべて異なります。ですのでバットを新調した際や、チームメイトのバットを借りる際は、必ずスウィートスポットの場所を確認してから使うようにしましょう。

スウィートスポットの調べ方

上の映像のように、バットの上でボールを弾ませてください。すると1カ所だけ弾み方が変わるポイントがあるはずなのですが、そこがスウィートスポットです。この映像のバットだと、PRIDEのPの字あたりにスウィートスポットがあります。よく聞いていただくと、スウィートスポットで音が変わっているのもおわかりいただけると思います。

このスウィートスポットなのですが、竹バットやラミバット、金属バットやビヨンドの場合は金属疲労を軽減させるためにも、バットの円周360°全面を満遍なく使ってください。しかし木製バットの場合は柾目(まさめ)だけを使うようにしてください。メーカーのマークがプリントされている面とその真裏を板目(いため)と言うのですが、板目で打ってしまうとバットはすぐに折れてしまいます。

木製バットの場合、裏表二面ある柾目のスウィートスポットにタイミングよく当てられた時にバットをしならせることができます。ただしハードメイプルなど、硬い材質の木製バットはほとんどしなることなく、どちらかと言うと打感は金属バットに近いと思います。とは言え、ハードメイプルなど青ダモ以外の素材であっても柾目のスウィートスポットだけを使うようにしてください。つまりメーカーのマークが入っている面と、その真裏の面は使っちゃダメということです。

木製バットはノブを見ると柾目と板目がすぐにわかります。縦線になる面が柾目で、横線になる面が板目です。

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バットの芯は鉛筆の芯と同じように、バットの真ん中に入っています。金属バットの場合はこの芯が太くて、芯の感触をあまり手応えとしては感じられないと思うのですが、木製バットの場合は芯が細いバットと太いバットの両方があって、芯が細いか太いかで打感は大きく変わります。

芯が細いバットはミートするのがすごく難しいのですが、ミート力があれば細身のバッターでも簡単に強烈な打球を打つことができます。ただ、プロ野球選手でもあえて芯が細いバットを選ぶ選手は少なく、有名どころではイチロー選手や篠塚和典選手が真の細いバットを愛用されていました。

逆に芯が太めの場合はミートはすごくしやすくなりますが、非力なバッターは余程タイミングが合わない限りは長打を打つことが難しくなります。と言ってもタイミングよくミートできれば体格に関係なくホームランを打つことはできます。一般的には芯が太いバットを使う選手の方が多いと思いますので、余程ミート力に自身がある選手でない限りは、芯は太めの木製バットを選ぶようにしましょう。

プラグ

金属バットの場合、ヘッドの先っぽにプラスティックのキャップが付いている場合があるのですが、これをプラグと言います。プラグにも様々な形状があり、まったく同じ長さと重さのバットでも、プラグの種類が変わると振り抜き感がガラッと変わることがあります。

プラグが付いていない金属バットも多数あるわけですが、フォロースルーが深いスラッガーは、フォロースルーが地面まで届いても大丈夫なようにプラグがついた金属バットを選ぶと良いかもしれません。

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3種類のバランス

これについてもほとんどの方はご存知だと思いますが、バットにはトップバランス、ミドルバランス、カウンターバランスという3種類のバランスがあります。トップバランスというのはヘッド寄りにバットの重心があり、ヘッドを効かせた鋭いスウィングをしやすくなります。

カウンターバランスはグリップ寄りに重心があり、非力な選手でもバットを振りやすくなります。そしてトップバランスとカウンターバランスの中間がミドルバランスとなり、基本的にはアマチュア選手ではミドルバランスのバットを選ぶ選手が一番多いのではないでしょうか。

入門用のバットとしてはミドルバランスが一番だと思います。そして基礎動作がしっかり身について来て、下半身主導でヘッドを利かせられるようになって来たら、もっとヘッドを効かせやすくするために、トップバランスに変えていくという流れが無難だと思います。

カウンターバランスに関してはほとんど選択肢がなく、お店でもほとんど見かけることはないと思いますが、このバットは、同学年の中でもかなり小さな選手でも振り抜けるように選ぶというパターンが多いと思います。例えば6年生なのに、4年生くらいの体格だったりした場合はカウンターバランスのバットを選ぶと良いのですが、でもやはり、商品としては数は非常に少ないと思います。

幻のツチノコバット

昭和の野球を知っている方であれば、ツチノコバットというものを見たことがあるかもしれません。ツチノコバットとは、ノブが非常に大きくなっているバットのことで、すりこぎバット、こけしバットとも呼ばれていました。究極のカウンターバランスとも呼べるバットで、圧倒的な振り抜きの良さがある反面、ヘッドを効かせられないため長打を打つのが難しいバットでした。

一番最近でもツチノコバットを愛用していたのは小坂誠選手や、久慈照嘉選手と、もう引退された選手ばかりです。そのため昔は市販されていたツチノコバットも、今ではオーダーメイドをしなければ入手できなくなってしまいました。ちなみに僕がツチノコバットの存在を知ったのは、大洋ホエールズのパウラ・ドード選手がきっかけでした。

バットのメンテナンス

木製バットは基本的には乾拭きをしますが、余程汚れが付いてしまった場合は固く絞った布で水拭きをして、そのあとはすぐに乾拭きをして水気を取り、日陰干しをしてください。そして湿度が高いところに保管することは控えてください。木製バットの最適な水分含有量は7〜10%程度と言われています。ですので梅雨時期や夏場などは特に湿度には気をつけて、バットケースには必ずシリカゲルなどの乾燥剤を入れておきましょう。

そして金属バットの場合も、汚れたらすぐに拭いてください。特に白線を引く石灰は要注意です。例えばバットの細かい傷に石灰が入り込んでしまい、さらに僅かでも水分を吸ってしまうと、そこで化学反応が起きて金属を腐食させてしまいます。上述した金属バットが折れてしまったという出来事も、おそらくはこれが原因だったのではないでしょうか。

金属バットを長持ちさせるためにも、汚れはもちろんのこと、もし石灰がバットについてしまったら速攻で拭き取るようにしてください。

バット用語のまとめ

今回はバット用語を詳しく解説して来たわけですが、いくつ正しく知っていましたか?ほとんどは聞いたことのあるバット用語だったと思いますが、微妙に勘違いされていた点もあったと思います。例えばスウィートスポットと芯ですね。これを間違えて覚えてしまうと、バットを上手く扱えなくなってしまいます。

その理由は、ボールはスウィートスポットと芯が交差する柾目(金属バットの場合は全面)のポイントで打ちたいからです。スウィートスポットと芯の概念があやふやになっていると、本当の意味でのミート力を身につけることができません。

プロ野球選手の場合、ミートが上手い選手は年間でバットを1本折るか折らないかです。例えば埼玉西武ライオンズの中村剛也選手などはほとんどバットを折ることがなく、折ってしまうと本当に悔しそうな表情を見せます。ですがミート力が低い選手は5本10本とどんどんバットを折ってしまいます。

バットの性格をしっかり把握せずに振ってしまうと、やはりそういうバットを折ってしまう選手になりやすいのではないでしょうか。良いバッターになるためには、良きパートナーであるバットの性格をよく知る必要があるわけです。ある意味これは、結婚と同じかもしれませんね。

 

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