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イップスとは一体何者?イップスの原因と改善方法を徹底解説!

最終更新日:2020.07.31

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野球選手を苦しめるイップスとは一体何者なのか?!

結論から言います。イップスとは不安症の一種です。そしてイップスは「自動化された動作の遂行障害」であると、2001年にイップスの専門家であるボウデンとメイナードによって定義づけられました。90年代まではまだ謎だらけだったイップスなのですが、2000年代に入ってから少しずつその謎が解明されてきています。もちろんまだすべての謎が解けたわけではないのですが、ここ10年くらいの間に、イップスの改善法はかなりの進化を遂げています。ですので専門家の力を借りれば、イップスはもう「まったく治せない」症状ではなくなったと言えます。

さて、イップスという言葉が最初に使われたのは1930年頃でした。トミー・アーマーというプロゴルファーがいたのですが、ある時から突然、ボールを打つ瞬間になると体の中で子犬がキャンキャン鳴きわめくような感覚になり、上手くボールを打てなくなってしまいました。子犬がキャンキャン鳴くことを英語で yip というわけですが、イップス(yips)という言葉を最初に使い始めたのが、この時のアーマー選手でした。

イップスとはオートメーションに狂いが生じている状態のこと

野球の練習というのは、動作の再現性を高めるために行うものだと考えることができます。つまりいつでも同じフォームで投げる、打つ、捕ることができるようにし、パフォーマンスを安定させることが目的になります。そしてその良いフォームが自動化されるくらいたくさん練習をすることによって、選手は上達していくことができます。

イップスとは、たくさん練習をしてせっかく身につけたオートメーション(自動化された動作)にわずかな動作修正が入ってしまうことによって、そのオートメーションに狂いが生じてしまっている状態のことです。

そしてわずかに加えられている動作修正は、無意識下で行われていることが大半です。つまり選手自身、動作修正を入れている意識がまったくないのです。このように無意識下で行われてしまっているために、選手自身でイップスを克服することが非常に困難になります。だからこそイップスになってしまった際は、できるだけ早くイップスを治療してくれるクリニックや、イップスの克服をサポートできる僕のような野球の先生に相談することが大切なのです。

イップスは風邪と同じで早期治療が大切

イップスは風邪と同じです。風邪も大したことないと思って放っておくと、そのうちこじらせて思った以上に酷い症状が出てきてしまいます。風邪はひき始めにしっかりケアしてあげれば、悪化する前にすぐ治すことができます。イップスもこれとまったく同じで、症状が軽いうちにケアしてあげることによって、酷くなる前に克服することができます。イップスも風邪と同じで、酷くなってからでは治すのに時間がかかってしまうのです。

イップスになりやすい人と、なりにく人がいる

基本的には、ミスを引きずらない性格の選手はイップスにはなりにくいようです。一方、ミスをした時に「ミスを次に生かそう!」と真面目に考えすぎてしまう選手は、ミスが続いてしまうことによってイップスを誘発してしまうケースが少なくありません。実際イップスに罹ってしまった選手をリサーチしていくと、このように真面目に考えすぎてしまう選手が多かったという結果もあります。

ミスを次に生かそうとするその考え方はとても大切です。しかし同時に、それを真面目に考えすぎても良くないわけです。野球にはミスは付き物です。どんな名手でも悪送球をしてしまうことはあります。ですのでミスをしてそれを次に生かそうと考えても、あまり深刻にはなりすぎず、「今回はこんな風に動いてミスをしたから、次はこんな風にしてみよう。それがダメならまた別のやり方を考えよう」という感じで考えていくくらいがちょうど良いのです。

イップスは病院で治療してもらうこともできる

上述したように、イップスとは不安症の一種であるため、病院(メンタルクリニック)で治療を受けることもできます。野球選手に限らず、他競技の選手や音楽家のイップスを治療してくれるクリニックが全国にあると思いますので、イップスになっているという実感があったら、できるだけ早く専門家に相談をして、酷くなる前に克服してしまうことが大切です。野球選手にしても、ゴルファーにしても、ピアニストにしても、酷くなってしまってからではイップスは治しにくくなってしまうので要注意です。

ちなみに病院に行くと、稀にジストニア(中枢神経系障害)という観点からイップス治療に対してアプローチされることがありますが、個人的にはあまりお勧めはできません。確かにイップスは中枢神経系に何らかの影響が出てオートメーションに狂いが生じてしまっているわけですが、それ以前にイップスは不安症の一種であるという大前提があります。つまりその不安を取り除いてあげなければ、イップスを根本的に治すことはできないのです。

そしてジストニアという観点でアプローチした場合、多くのケースで投薬治療が行われると思います。投薬治療には必ず副作用が生じますので、イップス治療の早い段階で薬に頼ってしまうことは避けるべきです。野球選手のイップス克服のサポートを専門的に行える先生やコーチであれば、薬に頼らずにイップスを改善に導けることが多いと思いますので、総合病院というよりは、まずはイップス治療を行なっているメンタルクリニックや野球塾に相談されると良いと思います。

中級者未満の悪送球の原因はイップスではないケースがほとんど

イップスというのは、基本的には良い動作がすでに自動化されている選手に起こる症状です。つまり動作が自動化されていない中級者未満の選手の場合、イップスではなく単なる技術不足である可能性がほとんどなのです。この場合はメンタルクリニックに相談するよりも、僕のようなイップスの克服を手伝える野球塾のコーチに相談されるのが良いと思います。

中級者未満の場合、基本動作を見直すことによって送球難を改善できることがほとんどです。ですので一般的には、イップスというのは中級者以上の選手に引き起こされることが多い症状だと言えます。

お子さんが野球を始めて、久しぶりにキャッチボールをするお父さん世代は要注意

ただし、中級者未満でもイップスになってしまうケースがあります。それは加齢が原因になっているケースです。野球の基本動作がしっかり身についていなかったとしても、普通のキャッチボールであればほとんどの方が普通に行えると思います。初めて野球をやったという方でも、よほどではない限り、普通に相手が捕れるところにボールを投げられると思います。

しかし年齢を重ねていくと筋力は衰え、中枢神経系の反応も鈍くなり、それによって思った通りの投げ方にならなくなり、ボールがあちこちに散らばってしまうというケースがあります。これはお子さんとキャッチボールをするのに久しぶりにボールを投げた、というお父さん世代によく見られるケースです。この場合は基本的な筋トレや、神経系トレーニングを行なってもらうことにより、イップスを改善できるケースが多くなります。

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一体なにが原因でイップスになってしまうのか?

イップスは不安症の一種なわけですが、不安を抱いてしまう何かがイップスの原因になっているケースがほとんどです。例えば「さっき悪送球をしているから、もう次は悪送球はできない!」「バッティングピッチャーをするのは良いけど、子どもにデッドボールを当てて怪我をさせてしまったらどうしよう」などなど、自分を追い込みすぎたり、不安を感じたりしてしまう状況がイップスを引き起こします。

そして頭の中で不安を感じてしまうと、それが中枢神経から末端(ボールを握っている手)に伝わってしまい、ボールをリリースする直前に勝手に動作修正が入れらてしまい、自動化されていた動作に狂いが生じ、投げたいところにまったく行かない大暴投になってしまう。これがイップスです。

ですのでイップスを克服するためには、まずその不安が何なのかを突き止めて、その不安を解消し、その上で狂いが生じてしまったフォームを直していく、という流れでのアプローチが必要になってきます。この順番が逆になり、先に動作だけを直そうとして不安の原因を放置してしまうと、イップス治療は思うようには進んでいきません。

イップスは院内ではなく、グラウンドで起こる症状

なお、メンタルクリニックの中には院内でのカウンセリングのみでイップスを治療しようとする先生がいた、という話を僕の生徒さんから聞いたことがあります。このようなクリニックは避けるべきです。

イップスというのはグラウンドのみで起こる症状です。ですのであくまでもグラウンドでのプレーを見て治療を進め、グラウンドでのプレーを見て完治を宣言すべきものです。もちろん先生に毎回グラウンドに来てもらうことは現実的ではないため、その場合はビデオやビデオ電話を活用するのが良いと思います。僕の場合はじっくりと何度も見返せるように、ビデオを使ってイップスの克服をサポートするスタイルを得意としています。

ですのでイップスの治療をお願いする際は、グラウンドに見に来てくれるか、ビデオをチェックしてくれる先生やコーチを探すようにしてください。もちろん僕の生徒さんが経験したような、ビデオさえ使わず、院内のカウンセリングだけでイップスを治療しようとするクリニックはレアなケースだとは思いますが、中にはそういうところもある、ということを頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。

イップスの選手に多い特徴とその改善法

完全にイップスになってしまっている選手によく見られるケースがあります。それは、ボールをリリースする瞬間まで親指がボールに触れてしまっている形です。イップスの選手はよく「ボールが手から離れてくれない」という話をするのですが、それはこれが原因です。通常の投げ方では、ボールをリリースする10〜20cm手前で親指はボールから離れていきます。

ボールが手から離れないという感触がある選手は、下の写真のような握り方を試してみてください。

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これはピッチャー特有のストレートの握り方なのですが、この握り方をすると、強制的に親指がボールに触れないようにすることができます。最初は慣れなくて思うように投げられないとは思いますが、しばらくこの握り方で丁寧にキャッチボールをしていくと、徐々に慣れて、親指がボールに触れないリリースを思い出していけると思います。ぜひ試してみてください。

イップスに関するまとめ

さて、そろそろまとめに入っていきましょう。イップスは何度も言うように、不安症の一種です。ですので不安を感じながらプレーをしてしまうと、真面目すぎる性格の選手にはイップスになる可能性が生じてしまいます。不安というのは根本的にプレーにとってプラスに働くものではありません。ですのでイップスになるならないに関わらず、何かプレーに対して不安があるのであれば、その不安を解消してからプレーに挑んだ方が好結果に繋がりやすくなります。

しかし実際にイップスになってしまった際は、酷くなる前に、できるだけ早く専門家のサポートを受けるようにしてください。悪化すればするほど、イップスは治しにくくなります。

TeamKazオンライン野球塾では、オンデマンド版でイップス改善法の特集もしていますので、イップスを改善されたいという方は、こちらのビデオもお役に立てると思います。もしあなたがイップスになってしまっている状態ならば、1日でも早くイップスを克服できるように願っております。そして僕のサポートが必要な場合は、いつでもお気軽にご相談くださいませ。お待ちしております。

 

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